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高齢者は多焦点眼内レンズに向く?年齢と向き不向きを眼科目線で解説

白内障手術そのものに年齢の上限はなく、高齢の方でも多焦点眼内レンズを選ぶことはできます。ただし加齢による瞳孔の縮小や、新しい見え方への慣れにくさから、単焦点眼内レンズが勧められる場合もあります。向き不向きは年齢だけで決まるのではないか、目や全身の状態を含めた検査と医師の判断のもとで検討されます。

この記事でわかることは、次の3点です。

  • 高齢でも多焦点眼内レンズを選べるのか
  • 高齢者で向きにくいとされる理由
  • 高齢者のレンズ選びと手術で確認しておきたいこと

高齢者は多焦点眼内レンズに向く?年齢と向き不向きを眼科目線で解説

高齢でも多焦点眼内レンズは選べるのか

高齢でも多焦点眼内レンズを選ぶこと自体はできます。白内障手術に固定の年齢制限はなく、選択肢としては年齢を問わず検討できるからです。ただし、後述するように高齢の方では単焦点眼内レンズが勧められる場合もあり、実際の向き不向きは年齢だけでなく目や全身の状態を踏まえて判断されます。まずは「高齢だから選べない」というわけではない点を、前提として押さえておきましょう。

白内障手術自体に年齢の上限はない

白内障手術に「何歳まで」という固定の年齢制限はなく、高齢の方でも受けられるのが一般的です。日本眼科医会の一般向け情報でも、白内障手術は、多くの場合において日帰りでの実施も選択肢となる手術として説明されています。 大切なのは年齢そのものよりも、目や全身の状態です。手術を受けられるかどうか、どのような方法で行うかは、白内障の進行具合や持病の有無などを確認したうえで判断されます。高齢であることが、そのまま手術を行えない理由になるわけではありません。

高齢でも多焦点を選べるが、単焦点が勧められる場合もある

多焦点眼内レンズを選ぶこと自体は、高齢の方であっても選択肢の一つとなります。一方で、加齢に伴う目の変化から単焦点眼内レンズが勧められるケースもあります。 これは年齢だけで一律に決まるものではありません。目の状態、普段の生活、そして本人がどのような見え方を望むかを踏まえ、検査と相談を通じて判断されます。次の章では、高齢の方で多焦点が向きにくいとされる理由を、仕組みから見ていきます。

高齢者における多焦点眼内レンズの検討ポイント

高齢の方において多焦点眼内レンズの選択に慎重な判断が求められる背景には、主に加齢に伴う目の変化が関係しています。具体的には、瞳孔が小さくなる傾向、新しい見え方への脳の適応力、術後のコントラスト感度の変化という3つの要素が挙げられます。これらはすべての人に一律に起こるわけではなく、個人差があります。それぞれの仕組みについて解説します。

加齢に伴う瞳孔の縮小がレンズの機能発揮に影響する場合がある

年齢を重ねると、瞳孔の大きさが徐々に小さくなる傾向があります。瞳孔はカメラの絞りのような役割を担っており、これが小さくなると目に入り込む光の量も減少します。 多焦点眼内レンズは、目に入ってきた光を遠くや近くなど複数の距離に振り分けることで、幅広い範囲を見えやすくする仕組みです。そのため、瞳孔が一定以上に小さい場合は光を十分に振り分けられず、レンズの持つ本来の機能が発揮されにくくなることがあります。

新しい見え方への脳の適応に時間を要することがある

多焦点眼内レンズを挿入した後は、遠くの像と近くの像を脳が適切に選択して認識することで、快適な見え方が得られるようになります。この適応プロセスは、目から入った情報を脳が調整していく神経のはたらきによるものです。 こうした新しい見え方へのなじみやすさには個人差があり、適応までに一定の時間を要する場合があります。一般的に、この適応力は年齢とともに緩やかになる傾向があるとされていますが、進行度合いは人によって異なります。

コントラスト感度や見る力の変化が影響することがある

加齢に伴い、網膜や視神経のはたらきといった「見る力」の土台は少しずつ変化していきます。これに加えて、多焦点眼内レンズは構造上、単焦点眼内レンズに比べてコントラスト感度(明暗のメリハリを識別する力)がわずかに低下する場合があるとされています。 これらの要素が重なると、薄暗い場所などで濃淡の差が分かりにくく、見えにくさを覚えることがあります。こうした懸念がある場合は、光を1つの距離に集めて十分な明るさと鮮明さを確保できる単焦点レンズのほうが、安定した選択肢となるケースもあります。 高齢だからといって多焦点レンズの選択が不可能というわけではありません。瞳孔の状態や見る力には個人差があるため、精密な検査を通じて一人ひとりの状態を確認することが重要です。

コントラスト感度や見る力の変化が影響することがある

高齢者のレンズ選び|単焦点が勧められる場合と多焦点が向く場合

高齢者のレンズ選びは、年齢だけで一律に決めるものではなく、単焦点・多焦点それぞれが適するケースが存在します。目の状態や日々の過ごし方によって、どちらが快適に感じられるかは異なるためです。ここでは、それぞれの特徴に応じた選択の目安を整理します。

単焦点眼内レンズが勧められることが多い場合

次のような状態や希望がある場合には、十分な光量で鮮明な見え方を得やすい単焦点眼内レンズが選択肢として有力になります。

  • 瞳孔が比較的小さい
  • コントラストのはっきりした鮮明な見え方を重視したい
  • 見え方の質やクオリティを最優先にしたい
  • 夜間に車を運転する機会が多い

単焦点レンズでは、遠くか近くのどちらか一方にピントを合わせるため、焦点の合わない距離については術後も眼鏡で補うのが一般的です。眼鏡を使用することへの抵抗が少ない方にとっては、安心感のある確実性の高い選択肢といえます。

高齢でも多焦点が向く場合がある

一方で、高齢の方であっても多焦点眼内レンズを選ぶメリットが大きいケースもあります。目や全身の健康状態が良好で、「日常生活においてできるだけ眼鏡への依存度を減らしたい」という強い希望があり、なおかつ多焦点レンズ特有の見え方の変化を事前に理解・許容できる場合です。 多焦点レンズでは、夜間に街灯や車のヘッドライトの光がにじんだり広がったりして見える「ハロー・グレア」といった現象が生じることがあります。こうした特徴をあらかじめ把握したうえで選択することが重要です。最終的にどちらのレンズが適しているかは、精密な適応検査と医師との十分な相談のもとで検討されます。

高齢でも多焦点が向く場合がある

高齢者の白内障手術で確認しておきたいこと

高齢者の白内障手術では、レンズの種類だけでなく、全身の状態や通院のしやすさも含めて確認しておくと安心です。年齢そのものより、目と全身の状態を踏まえて手術の方法やタイミングが判断されるためです。ここでは、相談へ進む前に押さえておきたい点を穏当に整理します。

年齢よりも目と全身の状態が大切

白内障が進んで水晶体が硬くなっていると、手術の負担が増える場合があります。また、高血圧や糖尿病などの持病や、服用している薬の有無も判断に関わります。

こうした点を踏まえ、年齢そのものよりも目と全身の状態を見て、手術の方法やタイミングが検討されます。気になる持病がある場合は、あらかじめ医師に伝えておくとよいでしょう。

認知症や通院への配慮も相談できる

白内障手術中は安静が必要なため、状況に応じて麻酔の方法や手術の進め方を工夫して対応することがあります。認知症がある場合でも、あきらめずにまず相談してみることが大切です。

また、通院や術後の点眼を家族がサポートできるかどうかも、事前に医師へ相談できます。実務上は、本人と家族の負担が少ない方法を一緒に検討していくことで、無理のない手術計画につながります。高齢の本人だけで判断せず、家族が一緒に説明を聞き、生活面のサポート体制も含めて相談すると安心です。

よくある質問(FAQ)

Q. 80歳を過ぎても多焦点眼内レンズは使えますか?

A. 年齢だけで一律に不可となるものではありません。80歳を過ぎていても適応となる場合はありますが、加齢による瞳孔の状態や見る力の変化によっては、単焦点レンズのほうが安定した見え方を得られることもあります。最終的な適応は、精密な適応検査の結果に基づき、医師との相談のもとで判断されます。まずは検査を受け、目の詳細な状態を確認することをおすすめします。

Q. 多焦点眼内レンズを入れた後、年齢とともに見え方が変わることはありますか?

A. 挿入したレンズ自体が経年劣化することはありませんが、加齢に伴い網膜や視神経のはたらきが少しずつ変化し、見え方の感じ方に影響を与えることはあります。また、手術後にレンズを固定する膜が濁る「後発白内障」などによって見えにくさが生じる場合もありますが、その際はレーザーによる追加の処置で対応が可能です。気になる変化が生じた場合は、速やかに医師にご相談ください。

Q. 高齢者の多焦点眼内レンズ手術は保険適用(選定療養)になりますか?

A. 多くの多焦点眼内レンズは選定療養の対象となっており、白内障手術の基本部分には公的医療保険が適用され、レンズにかかる差額分の追加費用を自己負担する仕組みです。ただし、一部の先進的なレンズは選定療養の対象外となり、全額が自己負担となる自由診療に該当する場合もあります。これらは年齢によって制度が変わるものではありません。費用や対象レンズの詳細は、受診先の医療機関へご確認ください。

まとめ|高齢者のレンズ選びは検査と医師相談で

白内障手術自体に年齢の上限はなく、高齢の方であっても多焦点眼内レンズを選択肢として検討することは可能です。ただし、加齢に伴う瞳孔の縮小や、新しい見え方への適応力といった観点から、単焦点眼内レンズが推奨されるケースもあります。 向き不向きは年齢だけで一律に決まるものではありません。目や全身の状態、日々のライフスタイル、臨む見え方を踏まえ、検査と医師との相談を通じて総合的に検討されます。選択に迷ったときは、家族も一緒に説明を聞き、納得できるまで相談することが、無理のないレンズ選びへの確実な一歩となります。

参考文献

公益社団法人 日本眼科医会 白内障手術を受ける方へ 知っておきたい白内障術後のケア

日本眼科学会 多焦点眼内レンズに係る選定療養の運用について

日本白内障屈折矯正手術学会(JSCRS)多焦点眼内レンズ情報

公益財団法人 日本眼科学会 多焦点眼内レンズに関する基本知識および適正使用について

この記事の監修者

タワーリバーク眼科 院長

大塚宏之

略歴
  • 1989年 山梨医科大学卒業(現山梨大学医学部)
  • 1989年 駿河台日大病院(現日本大学病院)眼科
  • 1991年 日本大学大学院医学部外科系眼科学入学
  • 1994年 眼科専門医取得
  • 1995年 日本大学大学院医学部外科系眼科学卒業(医学博士取得)
  • 1995年 松井病院眼科部長(出向)
  • 2020年 オンライン診療研修 修了(厚生労働省指定)
所属学会
  • 日本眼科学会
  • 日本眼科医会
  • 日本眼科手術学会
  • 日本白内障屈折矯正学会
  • 米国眼科学会
  • 米国白内障屈折矯正学会
  • 欧州白内障屈折矯正学会
  • 川崎市医師会理事

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