ICLの費用を調べて「両眼で数十万円かかるなら、健康保険は使えないのだろうか」「少しでも取り戻せる制度はないか」と気になっている方は多いのではないでしょうか。
結論からお伝えすると、ICL手術は近視や乱視を矯正する屈折矯正手術であり、公的医療保険(健康保険)は適用されず、自由診療(全額自己負担)となります。ただし、視力の回復を目的とした手術として医療費控除の対象になり得るため、確定申告によって税負担を軽減できる可能性があります。
この記事では、次の3点を整理して解説します。
- ICL手術に健康保険が適用されない理由と自由診療の定義
- 医療費控除・手術給付金・高額療養費制度の適用可否および申請の手順
- ICL手術の費用相場と医療費控除適用による実質的な自己負担額の試算
結論:ICLは公的医療保険の適用外(自由診療)
ICLは健康保険が使えないため、手術にかかる費用は全額を自分で負担します。費用は医療機関や使用するレンズの種類によって異なりますが、両眼で数十万円規模となるのが一般的です。
公的保険の枠組みでは費用軽減が行われないため、後述する医療費控除などの制度を活用し、実質的な負担を抑える方法を検討することが現実的です。
なぜ ICLは保険適用外なのか
ICLが保険適用外となるのは、公的医療保険制度は、主に「疾病や負傷の治療」を給付対象として設計されているためです。
近視や乱視は、眼鏡やコンタクトレンズといった代替手段で日常生活を送ることが可能とされています。ICL手術はこうした状態を外科的処置によって矯正するものであり、病気の治療というよりも屈折矯正を目的とした手術に位置づけられます。
そのため、同じ視力に関する手術でも、白内障のように「治療」と判断される手術は保険が適用される一方、屈折矯正を目的とするICLは保険の対象外となります。この区別が、ICL手術が自由診療に位置づけられる制度上の根拠です。
保険適用外でも使える?ICLで費用を抑える4つの制度の整理
健康保険が使えなくても、費用負担に関わる制度は複数あります。ここで混同しやすいのが、「健康保険」「医療費控除」「高額療養費制度」「生命保険の手術給付金」の4つです。結論として、ICLで実際に負担軽減が期待できるのは主に医療費控除であり、ほかの制度は原則として対象外、または契約次第となります。
それぞれの位置づけは次のとおりです。
- 健康保険: 適用外(治療目的の処置に該当しないため)
- 医療費控除: 対象(視力回復を目的とした手術に該当するため)
- 高額療養費制度: 適用外(公的医療保険が適用された医療費のみが対象となるため)
- 生命保険の手術給付金: 原則対象外(ただし契約内容や加入時期によって例外があるため要確認)
あらかじめこの全体像を把握しておくことで、各制度の具体的な適用条件を整理しやすくなります。

ICLは医療費控除の対象になる
ICLは自由診療であっても、医療費控除の対象になります。医療費控除は、1年間に支払った医療費の総額が一定基準を超えた場合に所得控除を受けられる制度であり、視力の回復を目的とした手術もその対象に含まれるためです。公的医療保険が適用されない一方で、確定申告を行うことで所得税や住民税の負担を軽減できる仕組みであり、費用面における重要な負担軽減策に位置づけられます。
医療費控除とは(自由診療でも対象になる理由)
医療費控除とは、1年間(1月1日から12月31日まで)に支払った医療費の実質負担額が一定額を超えた際、その超過分について所得控除を受けられる制度です。自由診療であるかどうかにかかわらず、治療や視力回復を目的とした正当な医療費であれば対象となります。
国税庁の規定において、視力回復を目的としたレーザー手術(レーシック)等の費用は医療費控除の対象と明記されています。ICL手術も同様に視力回復を目的とした屈折矯正手術に該当するため、医療費控除の対象として認められます。
一方で、容姿の美化や美容を主たる目的とした施術など、医学的な治療・回復目的とは認められないものは対象外です。ICL手術の適用可否について確認を要する場合は、事前に所轄の税務署または税理士へ確認してください。
控除額の計算の考え方と戻る金額の目安
医療費控除による軽減効果を算出するには、まず控除の対象となる金額(控除対象額)を確定させます。計算の基本的な枠組みは以下の通りです。
控除対象額は、1年間で支払った総医療費から、生命保険の給付金などで補填された金額を差し引き、さらに一律10万円(その年の総所得金額等が200万円未満の場合は、総所得金額等の5%の額)を差し引いた金額となります。
例えば、その年にICL手術の費用として70万円を支払い、補填される保険金がない場合、控除対象額は60万円が基準となります。
ここで留意すべき点は、この控除対象額がそのまま全額還付されるわけではないという事実です。実際に軽減される税額(所得税の還付および住民税の減額)は、この控除対象額に個人の所得に応じた所得税率などを乗じて算出されます。したがって、実際の還付・軽減額は個人の所得状況や課税所得金額によって異なるため、詳細な金額は自身の要件に基づいて算出する必要があります。
医療費控除を受ける確定申告の流れ
医療費控除の適用を受けるためには、原則として税務署への確定申告が必要となります。給与所得者で勤務先の年末調整を行っている場合であっても、医療費控除は年末調整の手続きでは処理できないため、自身で申告書を作成しなければなりません。
一般的に申告の際に必要となる主な書類・データは以下の通りです。
- 源泉徴収票(給与所得者の場合)
- 医療費の領収書・明細書(税務署からの提示要請に備え、一定期間の保管が義務付けられています)
- 医療費控除の明細書
- 本人確認書類(マイナンバーカード等)
確定申告書の手続きは、国税庁の「確定申告書等作成コーナー」などを利用して電子申請(e-Tax)または書面提出で行うことができます。申告期間は、原則として手術を行った翌年の2月16日から3月15日までです。
実務上は、手術費用本体だけでなく、適応の有無を確認する術前検査費や術後定期検診の費用、通院に要した公共交通機関の運賃(交通費)なども控除の対象に含めることが可能です。関連する領収書や公共交通機関の利用明細書などは破棄せず保管し、申告期日に備えて適切に管理することが推奨されます。
生命保険の手術給付金や高額療養費制度は使える?
生命保険の手術給付金と高額療養費制度は、ICL手術においては原則として対象外となります。民間保険の手術給付金は疾病等の治療を目的とした手術を給付条件としている契約が多く、高額療養費制度は公的医療保険が適用された医療費のみを対象とするためです。ただし、手術給付金の適用範囲は契約内容によって異なるため、事前に加入している保険の契約条項を確認することが推奨されます。
生命保険(民間医療保険)の手術給付金は原則対象外
生命保険(民間の医療保険)における手術給付金は、治療を目的とした外科的処置に対して支払われるのが一般的です。ICLのような屈折矯正を目的とした手術は、多くの医療保険契約において給付対象外と規定されています。
ただし、契約の締結時期や特約の内容によっては例外的に給付対象となる場合もあります。一例として、2007年3月以前に加入した古い民間の医療保険契約などでは、給付対象の要件を満たす可能性があるとされています。
給付の可否は個々の契約内容に大きく依存するため、自己判断で適応の有無を断定せず、加入している保険会社への問い合わせや保険証券の記載内容を確認することが重要です。
高額療養費制度は対象外
高額療養費制度は、1か月間に医療機関の窓口で支払った自己負担額が一定の上限額を超えた場合に、その超過分が払い戻される公的な仕組みです。
この制度の対象となるのは、あくまで公的医療保険(健康保険)が適用された保険診療の医療費に限られます。ICL手術は自由診療であり健康保険の適用外となるため、高額療養費制度の対象には一切含まれません。支払額が高額であることから同制度の適用を想定しがちですが、自由診療の費用は一律に対象外となる点を正しく認識する必要があります。
ICL手術の費用相場と実質的な自己負担の考え方
ICL手術の費用相場と、医療費控除による軽減効果を勘案した実質的な自己負担額を把握することは、資金計画を立てる上で有益です。総額はレンズの仕様や検査費用の有無によって変動するため、一般的な相場を基準として確認してください。
費用相場の目安(両眼・乱視あり/なし)
ICL手術の一般的な費用相場は、両眼でおおよそ40万〜80万円程度とされています。近視の矯正に加えて乱視の矯正にも対応する特殊なレンズを使用する場合は、レンズ代金が加算されるため費用が高額になる傾向があります。
また、手術費用本体とは別に、手術の適応を確認するための適応検査・術前検査費や、術後の定期検診費用が別途発生する医療機関もあります。具体的な金額は医療機関の価格設定や選択するレンズの種類によって異なるため、詳細な総額費用は受診を検討している医療機関へ個別に確認してください。
医療費控除を踏まえた実質負担のイメージ
実質的な自己負担額を算出する際は、窓口で支払う手術費用だけでなく、確定申告後に医療費控除によって還付・軽減される税額分を差し引いて評価することが現実的です。
例えば、両眼で60万円前後の手術費用を支払った場合であっても、医療費控除を適正に申告することで所得の状況に応じた税負担の軽減が受けられるため、最終的な経済的負担が実際の支払額よりも軽減される結果となります。
また、初期費用の負担を軽減するために、分割払いや医療ローン(メディカルローン)などの決済手段を用意している医療機関もあります。自身の予算や支払い計画に合わせて、無理のない範囲での決済方法を検討することが大切です。
よくある質問(FAQ)
Q. ICLとレーシックで医療費控除の扱いは違う?
A. ICL手術とレーシック手術は、いずれも視力の回復を目的とした屈折矯正手術として、医療費控除の対象になるという点において共通しています。術式自体は異なりますが、医療費控除の観点においては、いずれも視力回復を目的とした正当な屈折矯正手術であるかどうかが適用要件の基準となります。
Q. ICLの分割払い・医療ローンは利用できる?
A. 多くの医療機関で、分割払いや医療ローンの利用に対応しています。一度にまとまった資金を用意することが困難な場合における選択肢の一つとなりますが、金利手数料の有無や利用条件、審査基準は取り扱う金融会社や医療機関によって異なります。具体的な利用要件は、受診する医療機関で事前に確認してください。
Q. 医療費控除はいつ・どこで申告する?
A. 医療費控除の申告は、原則として対象となる医療費を支払った翌年の確定申告期間(例年2月16日から3月15日まで)に確定申告書を提出します。提出先は、自身の住民票がある住所地を管轄する税務署です。国税庁の「確定申告書等作成コーナー」などの電子申請システムを利用すれば、税務署の窓口に出向くことなく自宅から申告が可能です。
まとめ:制度を理解し、適応は精密検査で確認を
ICL手術は公的医療保険(健康保険)が適用されない自由診療であり、費用は全額が自己負担となります。一方で、視力回復を目的とした医療行為として医療費控除の対象に認められているため、確定申告を行うことで所得税や住民税の負担を軽減できる仕組みが用意されています。高額療養費制度や民間の手術給付金は原則として対象外ですが、古い医療保険契約など一部の例外がある点には留意してください。
各種制度を正しく把握し実質的な自己負担額を試算した上で、ICL手術には外科的処置に伴う特有のリスクや合併症が存在する事実を認識する必要があります。また、眼の形状や状態により手術の適応基準を満たさない事例もあるため、事前の精密検査と専門医による詳細な説明を通じて適応の可否を確認することが不可欠です。具体的な不明点は、各医療機関のカウンセリング時に直接相談してください。
参考文献

