ICL(有水晶体眼内レンズ)は角膜を大きく削らない手術のため、レーシックに比べてドライアイになりにくいとされています。もともとドライアイがある人でも受けられる場合がありますが、症状が強いときは先に治療を行うことがあります。最終的な適応可否や術後ケアは、精密検査と医師の判断によります。
この記事では、次の3点がわかります。
- ICLでドライアイになる、悪化するのかという結論とその理由
- ドライアイでも受けられるのか、改善するのか
- 術後の一時的な乾燥との違いと、術後ケア・確認方法

ICLとドライアイの基礎知識
はじめに、ICLとドライアイがそれぞれどのようなものかを整理しておきましょう。ICLは目の中にレンズを入れて近視や乱視を矯正する方法で、ドライアイは涙の層が不安定になって目に不快感が出る状態です。両者の関係を正しく理解するために、まずはこれら2つの前提を整理しておくことが重要です。
ICL(有水晶体眼内レンズ)とはどんな矯正方法か
ICLは、目の中にやわらかいレンズを入れて近視や乱視を矯正する方法です。「有水晶体眼内レンズ」とも呼ばれ、自身の水晶体を残したまま、その前にレンズを固定します。 手術は角膜に約3mmの小さな切開窓を作ってレンズを挿入するもので、角膜を大きく削ることはありません。
なお、ICLは公的医療保険が使えない自由診療(保険適用外)です。費用は全額自己負担となりますが、一定の要件を満たせば医療費控除の対象となる場合があります。レーシックとの違いについては後述します。
ドライアイとはどんな状態か
ドライアイは、涙の層(涙液層)の安定性が低下し、目の不快感や見えにくさが生じる状態です。ドライアイ研究会の定義でも、涙液の安定性の低下が主な病態とされています。 目の表面をおおう涙は、油の層(油層)、水の層(水層)、目の表面に涙をとどめる層(ムチン層)が組み合わさって構成されています。このバランスが崩れると、涙が蒸発しやすくなったり、目の表面に涙がとどまりにくくなったりします。 コンタクトレンズの長時間の装用や、乾燥した環境、長時間のパソコン作業なども、ドライアイの一因になり得るとされています。
ICLを受けるとドライアイになる・悪化するのか
結論として、ICLは角膜を大きく削らないため、基本的にはドライアイの発症や悪化のリスクが低いとされています。涙の分泌には角膜の神経(角膜神経)が関わっていますが、ICLは約3mm程度の小さな切開で行うため、この神経への影響が最小限に抑えられると考えられているためです。その詳細な理由について、レーシックとの違いを踏まえて解説します。
結論|ICLは角膜を削らないため乾きにくいとされる
ICLは角膜を大きく削らず、約3mm程度の小切開でレンズを挿入します。涙の分泌に関わる角膜神経への影響が小さいため、基本的にはドライアイになりにくい・悪化しにくいとされています。 ただし、目の状態には個人差があり、完全に乾燥を防げるわけではありません。気になる症状がある場合は、適応検査や医師への相談を通じて確認することが大切です。
レーシックとの違い(角膜神経と涙への影響)
レーシックは、角膜の表面に「フラップ」と呼ばれるふたのような層を作り、その下の組織をレーザーで削って屈折力を矯正します。このフラップを作製する際に角膜神経が一時的に切断され、涙の分泌が低下するため、術後にドライアイが起こりやすいとされています。
一方、ICLは角膜を削らず約3mmの小切開で行うため、角膜神経への影響がレーシックに比べて小さく、ドライアイのリスクは相対的に低いのが特徴です。 レーシックとICLは角膜へのアプローチが異なる別の手術です。レーシックで傷ついた角膜神経は、おおむね半年から1年ほどかけて回復していくとされていますが、ICLはそもそも角膜を削らないという点が大きく違います。そのため、両者のリスクを同列に扱う必要はありません。
術後に感じる一時的な乾燥は「ドライアイ」とは別
手術直後から数週間〜3か月ほどの間は、目が乾きやすいと感じる場合があります。これは切開や消毒、術後に使用する点眼薬などの影響によるもので、多くの場合は経過とともに落ち着いていく一時的な症状です。
この一時的な乾燥感は、疾患としてのドライアイに罹患した状態とは区別して考えられます。手術による一時的な乾燥感を、疾患としてのドライアイと混同しないよう注意が必要です。 ただし、乾燥症状が長期化する場合や強い不快感を伴う場合は、自己判断を避け、医師の診察を受けることが推奨されます。
ドライアイでもICLは受けられるのか
もともとドライアイがある方でも、ICLを受けられる場合があります。ただし、これは症状の程度によって異なり、症状が強い場合は先にドライアイの治療を行ってから適応を判断することもあります。ドライアイの症状がある場合でも一律に不適応となるわけではなく、適応の可否は詳細な検査と医師の診断によって決定されます。
もともとドライアイがあっても受けられる場合がある
軽度から中等度のドライアイであれば、点眼薬などで目の状態を整えたうえでICLを受けられる場合があります。自覚症状がある場合でも、それだけで不適応と判断されるわけではありません。自己判断を避け、適応検査によって現在の状態を正確に把握することが重要です。
症状が強い場合は先にドライアイ治療を行うことがある
重度のドライアイや、点眼治療で十分にコントロールできていない場合は、先にドライアイの治療を行って目の表面の状態を整えてから、適応の可否を判断することがあります。
また、ドライアイが存在すると、術前に行う度数計算などの検査精度に影響を及ぼす場合があります。目の表面(涙液層)が安定していないと正確な測定が難しくなることがあるため、状態を十分に改善させてから検査を進めるのが一般的です。
自身の判断のみで適応外と結論づけるのは適切ではありません。症状の程度に応じた適切な対処法は、詳細な検査と医師による診察を通じて判断されます。不安や疑問がある場合は、医療機関へ相談することが推奨されます。
ICLでドライアイは改善・解消するのか
ICLでドライアイが改善するかどうかは、その原因によって異なります。長時間のコンタクトレンズ装用が主な負担となっていた場合は、コンタクトレンズの装用が不要になることで症状が軽減する可能性があります。一方で、ICLはドライアイそのものを治療する手術ではないため、コンタクトレンズ以外に原因がある場合は改善するとは限りません。この点を正確に理解しておくことが大切です。
コンタクト由来の負担なら軽くなる可能性がある
長時間のコンタクトレンズ装用が目の負担となり、それがドライアイ症状の一因になっていた場合、ICLによってコンタクトレンズが不要になることで、装用に伴う諸症状が軽くなる可能性があります。
ただし、これはあくまで可能性の範囲に留まります。術後の効果には個人差があり、症状の改善を保証するものではないため、目の状態や原因に応じた慎重な見極めが必要です。
ICLはドライアイを「治す」手術ではない
ICLは、あくまで屈折異常(近視や乱視)を矯正するための手術です。ドライアイそのものを根本的に治療したり、完治させたりする目的の手術ではありません。
コンタクトレンズの負担以外に起因するドライアイ、たとえば涙の分泌量そのものの低下や、マイボーム腺の機能不全などによる症状は、ICLを受けても改善するとは限らず、術後も別途ドライアイの専門的な治療が必要になる場合があります。ICLによる視力矯正とドライアイの治療・ケアは、それぞれ独立したものとして認識しておくことが、術後のミスマッチを防ぐ上で重要です。
ICL手術後のドライアイ対策・術後ケア
ICL手術後は、処方された点眼薬を指示どおり継続することと、日常生活での乾燥対策を組み合わせることが基本となります。術後に一時的な乾燥を感じる場合であっても、適切なケアを行うことで多くは経過とともに落ち着いていくとされています。術後に自身で実施できる具体的なケアは以下のとおりです。
処方された点眼を指示どおり続ける
術後は、医師の指示に従って点眼薬の投与を継続することが基本です。回数や期間は目の状態に応じて設定されるため、自己判断で中断したり、使用量を増減させたりしないようにしてください。 万が一、気になる乾燥感や違和感がある場合は、定期検診の際や必要に応じた受診のタイミングで医師に相談してください。
日常生活でできる乾燥対策
点眼治療とあわせて、日常生活においては次のような乾燥対策が有効です。 ・エアコンの風が目に直接当たらないよう風向きを調整する ・加湿器などを活用し、室内を適度な湿度に保つ ・パソコンやスマートフォンでの作業中は、意識的にまばたきを増やす ・こまめに休憩を挟み、20分ごとに遠くを見るなどして目を休める
パソコンやスマートフォンの作業時間が長いほど、まばたきの回数が減少して目が乾きやすくなります。術後もこうした生活上のケアを取り入れ、無理のない範囲で継続することが効果的です。
ドライアイが気になるときの確認方法と次の一手
ドライアイが原因でICLの検討を迷っている場合、自己判断で断念するのではなく、適応検査と医師によるカウンセリングで状態を確認することが適切なステップです。ドライアイの重症度や適応の可否、事前に治療が必要であるかなどは、詳細な検査を通じて総合的に判断されます。また、ドライアイ治療と並行してICLを検討するという進め方も可能です。
適応検査と医師のカウンセリングで確認する
ドライアイの程度、ICLの適応可否、および事前にドライアイ治療を行うべきか否かは、適応検査と医師のカウンセリングによって明確になります。 適応検査では、ドライアイの状態だけでなく、目の中のスペース(前房深度)や角膜の内側の細胞(角膜内皮細胞数)、必要な屈折度数などを含め、目の状態が総合的に測定されます。これらの客観的なデータに基づいて、医師が適応の可否を最終判断します。
ドライアイ治療と並行して検討するという選択肢
ドライアイがある場合、まずは専門的な治療を受けて目の表面を良好な状態に整えながら、並行してICLの検討を進めていく手法もあります。早期に結論を出すのではなく、目の状態に合わせて段階的に検討を進める方法も有効な選択肢となります。 なお、費用の面においてICLは自由診療(保険適用外)であり全額自己負担となりますが、一定の要件を満たせば医療費控除の対象となる場合があります。
よくある質問(FAQ)
Q. ICL手術後にドライアイの症状が長引くことはありますか?
術直後は切開創や点眼薬の影響により一時的な乾燥感を覚えることがありますが、多くは経過とともに軽減していくとされています。乾燥症状が長期化する場合や症状が強いと感じる場合は、自己判断で放置せず、定期検診や随時受診の際に医師へ相談してください。
Q. 普段から市販の目薬(人工涙液など)を頻繁に使っていても適応検査は受けられますか?
市販の点眼薬を使用している状態でも、適応検査を受診することは可能です。ただし、目の状態は検査によって総合的に評価されるため、普段の点眼薬の使用状況についても事前に医師へ共有することで、より的確な診断が可能となります。
Q. ドライアイの目薬を使っていてもICLは受けられますか?
点眼治療によって状態が適切にコントロールされている軽度から中等度のドライアイであれば、手術を受けられる場合があります。ただし、最終的な適応可否は精密検査の結果と医師の診断によるため、現在使用中の点眼薬を医師に提示した上で相談してください。
まとめ|ICLとドライアイは検査と医師の判断で確認を
ICLは角膜を大きく削らない術式であるため、レーシックと比較してドライアイを発症・悪化させるリスクが低いとされています。もともとドライアイの自覚症状がある方でも手術を受けられるケースはありますが、症状が重度である場合は、先行してドライアイの治療を行うことがあります。
コンタクトレンズの装用による負担が原因のドライアイであれば、ICLによってコンタクトレンズが不要になることで症状の軽減が期待できる一方、ICL自体はドライアイそのものを治療する手術ではありません。術後のケアや最終的な適応判断は、精密検査と医師の診断に委ねられます。
ドライアイを理由に手術を躊躇している場合は、自己判断を避け、まずは適応検査とカウンセリングによって自身の目の状態を正確に把握することが推奨されます。
参考文献

